自らの手で「銃」を構え、獲物を仕留めたい。そんな欲求が私には割とある。ジビエ肉を頂く機会があると一度くらいはちゃんと自分の手で、最初から最後までその命を尊重し、頂きたいという願望が湧いてくる。
また、どこかで物語で語られる、狩猟という行為の一片に触れてみたいと思ってしまう。
そんな願望に現実を突きつけ、狩猟とはどういうものなのか教えてくれるのがこの漫画だ。主人公は実際の作者であり、ほぼノンフィクション構成で出来上がっている。始まりは狩猟免許を取得してからの、1年目の出来事から順番に語っていってくれる。
まず「銃」の取得方法や狩猟鳥獣がなんなのか、罠を仕掛けるうえで重要な事は何か? などなどを実際の体験含め、面白おかしく説明してくれる。
基本的には狩猟生活の日常を描いた作品なのだが、本当にリアリティラインの地の付き方が違う。実際に体験して、撃って、当てて、食べた人間じゃないと書けない内容を描いている。
ここで面白いのは、作者の驚異的な食に関する好奇心と欲求だ。本当にとれるものならなんでも捌いて食べてしまう。これが一般人との違いだと言わんばかりだ。ヌートリアという巨大なネズミやさらには「カラス」まで食べてしまう。(ある意味ゲテモノ料理だが、命を奪った以上食べなくてはいけないという精神性が良い)
作者の個性的な人格と行動から内容はとてもクオリティの高いものになっているし、山に関する知識が流石といった具合で見事。本当に細かい描写がしっかりしている。
また、狩猟に関する現実も突きつけてくる作品で、素人にはとても真似できないお話の内容だが、こんなルポ漫画はとても貴重だから是非オススメだ。
これから狩猟生活を始める人には絶対にオススメの漫画でもあるし、創作活動で、キャラクターに狩猟用の「銃」を持たせたいと思っている人にもオススメだし、イノシシやシカの肉を実際に食べてみたいと思っている人にもオススメだ。ちなみにジビエ肉は美味しいが、下処理の段階が本当に大変なのは知っておいた方が良い。そのへんのスーパーで買ってくる肉の衛生状況に感動できるようになる。
本作のここまで実際にチャレンジし、実体験として、読ませてくる作品は珍しいので、狩猟というものに興味がある人には是非進めたい。